その靴で歩くこれからを想像する
先日、靴を買った。
もう何年も憧れ続けていた某ブランドの靴。
結婚式のドレスに合わせる靴だけど、せっかくだからその先も長く大切に履けるものを、と探していた。
その日、メガネを新調したいという彼にくっついて銀座に出かけた。
靴を買うつもりなんて毛頭なかった。
でも、「どうせ銀座まで来たんだから、あのお店を拝んで帰ろう」そんな気持ちが湧いてきて、ふらりと立ち寄ったのが運の尽き。
出会ってしまったのだ。
繊細なレース、まっすぐに伸びる細く美しいピンヒール。
すべてが計算され尽くされた、その一足に目を奪われた。
「履いてみたら」と促す彼。ラス1で残っている在庫。
震える心をなんとか抑えて、用意された靴に足を滑らせる。
ぴったりだ。鏡に映る姿を見て、魔法にかかったかのような気持ちになった。
その瞬間、心は決まった。
正直、ちょっと背伸びをした買い物だった。
でも、この靴が本当に似合う女性はどんな雰囲気の人だろう、
そして、それに近づくためにはどうしたらいいだろう、
と考えるとドキドキする。
すらりとピンヒールを履きこなし、颯爽と歩く人。
美しさと品を兼ね備えたこの靴を具現化したような人。
帰り道、彼にこんなお願い事をした。
「毎年一回でいいから、この靴を履いて、ドレスアップしてデートがしたい」
この先、この靴で彼の隣を歩き続ける。
並んで、同じ歩幅で。
そう、心に誓う力を、あの素晴らしく美しい靴が私にくれた。
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