30歳を目前に新しい友だちができた話

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私は友だちが少ない。前々からわかっていたことだったけど、結婚式の招待者リストを作成しながら、見事にそれが実証された。小規模な会にしておいて良かった…と心から思った。

大学時代の恩師も友人が少ないタイプだった。いつもジャケットとシャツにジーンズを履いて、体が弱いのにタバコがやめられなくて「ダメだよねえ」と笑う、カッコいい女性だった。

とても厳しいので、彼女を苦手とする学生は多かったけれど、私はなぜかウマが合い、何かにつけて可愛がってもらっていた。結婚せず、ネコと暮らし、研究だけに没頭し続ける彼女の生き様がとても好ましかった。

そんな彼女が何気なく言った一言が今でも忘れられない。

「友だちなんて片手で数えられるだけで充分なんです。でもね、大人になって、しかも仕事を通じて親しくなり、友だちと呼べるほどになった人は本当に本当に大切にした方がいいですよ。」

その時はピンとこなかったけれど、今ならよく分かる。そもそも仕事は利害関係で成り立っている。社内でも社外でも同じだ。だからこそ、利害関係を超えて結ばれた関係性は何にも代え難く、そして強い。

初めて就職した会社で、入社してからずっと一緒にプロジェクトを進めていた上司が、部署を外されると聞いた時、頭を鈍器で殴られるような、心臓を鋭利な刃物で抉られるような、そんな感覚に襲われた。

彼女は長時間労働が常態化した部署の働き方を変えるべく、社長命令で私の部署に移動してきて、業務フローを見直し、部員の適性を把握し、どうすればもっとホワイトに健全に皆が働けるのか、毎日必死に考えていた。私はことをずっとそばで見ていたし、支えてきたから、彼女がどれだけの思いをかけていたか知っていた。だからあまりに悔しかった。あまりに理不尽すぎることだった。その日は一晩中泣いた。

そうして泣きじゃくりながら、居ても立っても居られなくなり、上司に連絡をした。すると、彼女から思いもよらない返事が返ってきた。

「ふみさんが入社してきたときから、なぜがずっと昔から友だちだったような、嬉しいことも辛いことも一緒に経験する、思春期の友情のような、そんな気持ちを持っていたよ。歳も離れているのに不思議だね。」

もう、泣くしかなかった。そして、心に誓った。一緒に仕事をすることは叶わなくなったけど、私はこの人を一生の友として大事にする、と。姉のような、同級生のような、憧れも親しみも混ざった不思議な感覚をくれる、素晴らしい人。

体が弱くて、頭が良くて、美しくて、さっぱりした性格で、合理的で、いつもは声が小さいのに、笑うときだけよく響く声でけらけらと笑う。

ああ、会いたいな。コロナが落ち着いたら真っ先に会いたい。

友だちができた。30歳を目の前にして、新しい友だちが。それも一生大切にしたいと思えるほどの友だちだ。

人生嫌なこと苦しいこともたくさんたくさんあるけれど、不意に突然、こんな素晴らしい出来事があるから面白い。